『ムスペルの王城』
ムスペルの王族が住む城。
一際大きい火山がある。この国の由来となった炎神ムスペルが住みかにしていたとも、産まれ落ちた場所ともまことしやかに囁かれている。その真偽のほどは定かではない。
天を衝くその山をムスペルの王族が根城に選んだのも、きっと伝説にあやかってのことだろう。火山の中腹から領土を見下ろすように雄々しくそびえ立っている。あるいは、攻め入る外敵を正面から見据えるためか。
王城への入り口は二通りある。
ひとつは城を正面から突き抜ける山道。ふたつは裏の森からの迂回路だ。
城の裏手に回ってみる。深い森が広がっている。
ここでかくれんぼしたらなかなか見つけるのは難しいのではないだろうか。
森の中を歩いていると、ある疑問が浮かび上がった。
いわく、かつてこの国で権勢を奮った「炎の王」で知られるスルト王は、身体から燃え盛る炎で森を一瞬にして更地に変えたという。かの王がどうして城の裏手に森を残していたのだろうか。
スルト王の命は不死不滅であったとも言い伝えられている。
もしかすると、私たちには分からないような価値観を持っていたのかもしれない。裏の森という攻め入る余地を残しておいたのも、彼なりに挑戦者を見極めるためだったのだろうか。「正道ではなく裏道から攻めるような弱者に、王の相手は務まらん」と、そういう思いがみえてくる。
ともすれば慢心とも思えることこそ、スルト王の強さの秘訣だったのかもしれない。
物語で描かれる炎の王は暴虐のかぎりを尽くす悪役の印象が強い。しかし、小細工を弄さない武人気質には、現代でも一部に熱狂的なファンがいるようだ。
あなたもムスペルの王城を訪れてみて、かの王が生きた足跡を辿ってみてはいかがだろうか。
▼ 備考。
今回はスルトさまの根城です。
よくよくストーリーを追ってみると「裏手からなら敵が少ない」とか「こっちの道は敵も知らない」とかでアスク側が裏をかくのですが……スルトさま、自国内でその出し抜かれ方はどーなんだ……ってツッコミを入れずにはいられません。スルトさまも防衛戦は不得手なのか……抜けてるトコロあってかわいいです。
それもこれも、不死だからこその慢心なんだろうなぁと思いつつ。こんな自分本位すぎる王様だと部下も国民もたまったもんじゃないよな! と思わずにはいられません。
そんなスルトさまですが、アスクやニフルに攻め入ったおりには一面焦土にしなかったりと、案外優しいところあるんですよね。
優しいというか、たぶん行軍するときに田畑を焼いちゃったら補給ができなくなっちゃうから仕方なくなんだと思うけども。
スルトさまがたとえ不死不滅のおかげで餓死しない体質だとしても、ムスペル兵たちはそうじゃないもんな……
などと遠征した時の様子を妄想してみると、ちょっと面白いですよね。
野営で兵士たちがむしゃむしゃご飯食べてるときに、「はあ〜早く行軍したいのになぁ」とか思いながらも部下に気を遣って黙って眺めているスルトさま。ちょっとかわいいぞ。
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